AI・開発 / 技術研究の解説

AIでコードを書くと、なぜか仕事が遅くなる。速くなる場面との違いは?

一瞬でコードが出てきた。でも、確認して直していたら夜になった。速くなった研究と遅くなった研究を並べると、「生成の速さ」の次に測りたいものが分かります。

4資料を参照読む目安 6分2026.10.30制作・運営:ENGINEERING BRIDGE
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この記事の目次

コードが出た瞬間より、終わった瞬間を測ろう

空の画面へ「表データ(CSV)を読んで集計するコードを書いて」と頼む。十数行のコードがすぐ出て、これは助かる、と思った。ところが、自分のファイルでは列名が違う。直したら今度は空欄の行で止まり、最後は表示された数字も元データと照合することになる。思い当たる場面ではないでしょうか。

ここで知りたいのは、AIが文字を出す速さより、目的の結果を確かめ終わるまでの時間です。生成、読み解く、直す、試す。このうち生成だけが短くなっても、ほかが伸びれば一日の作業は早く終わりません。

つまり、最初に変えたい物差しは「何行書けたか」から「何を終えたか」へ。仕事を手伝ってもらう道具なら、最後の確認まで含めて比べたいところです。

55.8%速かった実験と、19%遅くなった実験

実際、研究でも結果は一方向ではありません。Peng氏らの2023年の公開研究では、開発者に、ブラウザなどの要求に返事をするHTTPサーバーをJavaScriptで実装してもらい、Copilotを使える群の完了が55.8%速かったと報告しました。作る対象と終わりが決まった課題で、生成の助けが働いた例です。[1]

一方、Becker氏らの2025年の研究は、経験ある16人が、平均5年ほど関わった、公開ソフトウェア(OSS)の246タスクに取り組む設定でした。タスクごとに当時のAIを使えるかを割り当てると、利用可能な条件の完了時間は19%増えました。参加者自身は、終えた後も速くなったと見積もっていたんですね。[2]

二つの数字は、同じ試験の勝敗表ではありません。新しく小さなものを作る課題と、よく知るプロジェクトの既存の約束を守って直す課題では、必要な確認が違います。ツールの世代も参加者も違う。大切なのは、この違いを自分の作業のどこへ当てはめるかです。[1][2]

自分が知らないコードほど、確認の仕事が増える

集計コードの例に戻りましょう。AIの提案が、データを読む場所、空欄の扱い、並び替え、画面表示を一度に変えたとします。動いたとしても、数字が変わった理由を特定するには、その全部を読まなければならなくなる。提案が大きいほど、受け取る側の確認も大きくなるわけです。

Vaithilingam氏らの利用者研究で扱われたのも、生成結果を理解し、デバッグする使いづらさでした。AIを使いたいという感覚と、課題を短時間で終えられたかは、分けて測る必要があります。[3]

確認を省けば速く見える、という問題もあります。Perry氏らは47人が取り組むセキュリティ関連の課題で、AI条件の安全性と過信を調べました。速さを測るときに、入力の境界や権限の確認まで捨ててしまうと、別の種類の仕事を比べることになってしまいます。[4]

たとえば、空欄をゼロとして扱うのか、その行を除くのかで、平均値は変わります。コードが止まらず動いても、欲しかった集計とは違うかもしれない。ここを先に決めておけば、「AIのコードが間違った」という大きな話から、「空欄の扱いが依頼と違った」という直せる話へ小さくできます。

自分ではまだコードを読めないなら、変更を採用する前に、二、三行の架空データと期待する答えを作ってもらいましょう。その答えだけは手計算で確かめる。仕組みを全部学び終えるまで何も使えない、という話にはせず、今の自分で照合できる範囲を少しずつ広げる作戦です。

そこで、終わりの条件を先に三つ書きます。「空欄があっても処理できる」「合計が手計算と一致する」「関係のないファイルを変えない」。AIにも同じ条件を渡し、提案を一か所ずつ受け取る。大きな塊を後から理解するより、今どの条件を確かめているかを保ちやすくなります。

下の例では、生成にかかった時間だけならAI側が圧倒的に短い。でも、確認と修正まで数えると、自分で書く20分に対してAI側は23分。生成で得た時間の余裕を使い切り、この例ではAI側が3分長くなります。これは説明用の数字です。研究の平均値を足し合わせた予測ではなく、自分の作業で記録する欄を見つけるための資料です。

しくみを、手元の例で

「生成が速い」と「完了が速い」を切り替える

自分で書く
12分
12分
AIの提案を使う
2分
2分

生成だけなら12分と2分。まだ、どちらの作業も確認は終わっていません。

  • 書く・生成
  • 読み解く
  • 修正
  • 確認
説明用の例です。研究の実測データや、あなたの環境の測定結果ではありません。ボタンで見る条件を切り替えられます。

一週間だけ、手戻りまで記録してみる

自分に合うかは、似た難しさの小さな作業で比べてみましょう。仕事のコードを外へ送る前に、会社の利用ルールを確認。許可された練習用のコードなら、同じ入力と期待する出力を用意し、AIあり・なしの作業を別々に記録できます。

記録は開始時刻と終了時刻だけでもよいですが、「読み解いた時間」「直した回数」「最終チェックが通ったか」も残すと理由を追えます。自分で先に解いた課題をもう一度AIで解くと、覚えた分だけ有利になる。順序を入れ替え、似た別課題でも数回試すと、その偏りを減らせるでしょう。

途中でAIを使うのをやめた回も、失敗として捨てずに残してください。「見当は付いていたのに、説明のために時間を使った」「知らないAPIの書き方は助かった」など、任せる部分を選ぶ材料になります。

手順が見える資料

実作業で残す、小さな比較記録

記録すること例
終わりの条件空欄の入力を含む3例で、期待値と一致
時間の範囲依頼文の準備から最終確認まで
手戻り列名の修正1回、空欄処理の修正1回
次の判断雛形だけ任せ、集計条件は自分で決める
記入済みの説明例。研究参加者の実測ではありません。

速くならなかったら、任せる場所を小さくする

うまくいかなかった回から「自分はAIに向いていない」と決めるのは、もったいない。先ほどの集計なら、仕様を一緒に決める、テスト入力を増やす、既知の処理の雛形を書く、と役割を分けてみます。一度に全部を任せず、助かった一工程を残せばいいんです。

2025年の遅延という結果も、未来の全ツールへの判決ではなく、その条件で起きた観察です。だから、評判の数字より、自分が確認できた仕事の区切りを持つ。AIを使ったかどうかより、次も理由を説明して使い方を選べることを、今日の成果にしてみましょう。[2]

研究の補足と、よくある疑問

二つの研究の数値を、そのまま自分の短縮率にできる?

対象の作業、参加者、ツール、実験の方法が違います。55.8%と19%を差し引いたり、現在の全AIの優劣としたりせず、自分の課題の条件を照合する材料にします。[1][2]

出典と確認した範囲(4資料)

出典と、読み取れる範囲

原著の公開要旨・取得できた本文部分・研究レビューと、仕様を確認する公式資料を照合しています。対象と比較条件が違う結果を一つの効果へ合算せず、手元の操作例は編集上の説明例として区別します。確認範囲は資料ごとに示しています。

  1. 無作為化比較試験・未査読arXiv公開版を参照。刊行版との対応・版差は全面照合していません。

    対象・方法:ソフトウェア開発者がJavaScriptのHTTPサーバーを実装する統制実験。

    主な結果:Copilot利用群で課題の完了が55.8%速かったと報告。

    限界:短い特定課題と当時のツールの比較。保守・レビュー・長期の生産性全般へ換算しない。

    確認した範囲

    原著の公開要旨を確認。本文全体の精読・実験の追試は未実施。 確認日:2026-10-29

    取得できた書誌で撤回・懸念通知は確認されていません。出版社の履歴を網羅した監査ではありません。

  2. 無作為化比較試験・未査読arXiv公開版を参照。刊行版との対応・版差は全面照合していません。

    対象・方法:経験ある開発者16人、慣れた成熟OSSの246タスク。2025年初頭のAI利用可否をタスク単位で無作為化。

    主な結果:利用可能条件で完了時間が19%増加。本人の予想・事後評価と実測が逆向きだった。

    限界:2025年2〜6月のツール・開発者・対象プロジェクトに限定。2026年の全AIや初心者の効果を断定しない。

    確認した範囲

    原著の公開要旨を確認。本文全体の精読・実験の追試は未実施。 確認日:2026-10-29

    取得できた書誌で撤回・懸念通知は確認されていません。出版社の履歴を網羅した監査ではありません。

  3. 比較実験

    対象・方法:コード生成ツールを使うプログラミング課題の利用者研究。

    主な結果:理解やデバッグなど、生成された後の利用上の難しさを扱う。

    限界:当時のツールと課題。主観的な好みと完了時間を同一指標にしない。

    確認した範囲

    Sciteの書誌と、Perryらの本文にある本研究の紹介を確認。原著本文の独立した全文照合は未実施。 確認日:2026-10-29

    取得できた書誌で撤回・懸念通知は確認されていません。出版社の履歴を網羅した監査ではありません。

  4. セキュリティ実験

    対象・方法:47人、Python・JavaScript・Cの5種類のセキュリティ関連課題。

    主な結果:AI利用条件で脆弱性の増加と安全性への過信を観察した。

    限界:Codex系の当時の支援と課題設定。現在のすべての生成コードの脆弱性率を示すものではない。

    確認した範囲

    2022年arXiv版の本文冒頭・結果の説明と、2023年CCS版の書誌を照合。版差の全面監査は未実施。 確認日:2026-10-29

    取得できた書誌で撤回・懸念通知は確認されていません。出版社の履歴を網羅した監査ではありません。

この記事は複数文献を照合した編集記事です。既存研究を照合し、結果と条件を紹介しています。研究が同じ参加者を含む可能性があるため、文献間の人数を足していません。本文の行動提案・未来のシナリオは編集上の整理です。

文献の選び方・撤回と訂正への対応 →